トピックス
写真家・六田知弘の近況 2012
展覧会や出版物、イベントの告知や六田知弘の近況報告を随時掲載していきます(毎週水曜日更新)。
過去のアーカイブ
- 2012.02.03 「OKUGAKE」
ある雑誌に掲載された大峯山の奥駈修行の写真に付けた拙文です。
眼下の山肌を雲が巻く。修験者たちは、そのなかを浮遊するかのごとくひたすら南に向かって山駈ける。
白い装束を着て、白い雲に身を投じれば、空(くう)のなかに吸い込まれ、母なる山で一度死ぬ。
冥途の闇を引き摺りながらも歩き切り、雲の切れ間に再び青い空を望むとき、人々は新たな生に涙する。
3月後半に発行予定の写真集「OKUGAKE」もやっとテスト印刷に入りました。
4月発行予定のシトーの写真集(タイトル未定)も校正刷りをすすめています。
ところで、六本木のサントリー美術館で行われている大阪市東洋陶磁美術館の所蔵品の展覧会に行きました。もう何度も見ているものばかりですが、私はやっぱり、中国ものだと「汝窯 青磁 水仙盆」が、朝鮮ものだと「蓮池鳥魚文 俵壺」、「青花 秋草手 面取瓶」(今回この瓶はライティングがよくなく、その魅力が少し薄れてしまっていたのが残念ですが…)などがたまらなく好きです。そして今までもいいとは思っていたのですが、今回特に強く心ひかれたものは、朝鮮時代の「白磁 面取壺」です。こんな心が浸み込むような壺を傍らに置いて、時々手に取り撫でていたい、そうしみじみ思ってしまいました。(六田知弘)- 2012.01.27 雪
私の住む東京郊外に今年初めて本格的な雪が降りました。都心でも宵から降りはじめて、私が最寄りの高幡不動の駅の降りた夜11時ころは、10㎝近く積もっていました。私は、子供のように嬉しくなって、年末に買ったばかりのiPhoneをポケットから出して、そのカメラで駅から高幡不動に続く参道商店街を撮りながら帰りました。お不動さんの仁王門前の街路樹はその枝にたっぷりと雪をのせ、明るい街灯の光をうけてまるで、満開の桜のように見えました。
それにしてもこのiPhone4sのカメラはよく写ります。白トビなどしない柔らかな質感表現と、それ以上に、全くオートで撮っても肉眼で見たときと同じようにうす暗いところはうす暗いままに描写されるのには、ちょっと驚きです。一眼レフのデジカメも(オートで撮っても)こういう描写ができればいいのにとつい思ってしまいました。 (六田知弘)
- 2012.01.20 インドの石像
あるところで、インドの古代の彫刻を見せてもらいました。仏教やヒンドゥー教、そしてジャイナ教などの石像やテラコッタです。見た瞬間、アドレナリンが私の脳内に放出されて興奮し、そしてため息がでました。なんというか、普段私たちがなじんでいる仏像とはちがう、身体や顔の表情から香り出る独特の匂いのようなものに反応したのかもしれません。
インドからスリランカ、そして東南アジアへ伝わった仏像やヒンドゥー教の神々の像は、一見我々日本人には違和感がありますが、実はとっても魅力あるものだと、私はこのごろますます強く思うようになっています。(六田知弘)- 2012.01.13 アーヴィング・ペン
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久々にシャーカフスキー編集のアーヴィング・ペンの写真集を開きました。そして、かなりの刺激をうけました。まるで手術で使われるレーザーメスのように目の前に存在するモノの内側まで切り込み、えぐり取るあの視力はなんなんでしょう。ファッションという、あくまでも外見を意識した美を撮る写真家であるにもかかわらず、しわや汚れや老いやたるみや影など、普通はいわゆる醜いものとされるものを、排除するどころか反ってそれを積極的に演出の道具として活用する。そしてその人やモノの別の次元の美を表現する。おそろしい写真家だと思います。地面に捨てられ、踏んでつぶされて髪の毛がこびりついた、きわめて汚く不潔な煙草の吸殻が、ペンの手にかかるとなんでこんなにも魅力的な存在と化してしまうのか。萎れて花びらの先端が茶色くなってしまったバラの花がどうしてこんなに美しく感じてしまうのか。モノに向かってシャッターを押しながら考えていくしかないと思っています。(六田知弘)
- 2012.01.06 吉野の雪桜
新しい年が明けて、元日には家族で奈良の三輪山(大神神社)に初詣に行き、2日は実家でプリント作業、3日は吉野山の金峯山寺に写真集と写真展の打ち合わせ、続いて4日にもうっすらと雪化粧した吉野山に撮影に行きました。
吉野山といえば桜ですが、何万本ものヤマザクラが山の斜面に咲く樣は、花というよりまるで一面の雪景色です。そして、今年初めてほんものの雪景色を見ることが出来ました。真新しい雪をきゅうきゅうと踏みしめながら、蔵王堂から急な坂道を水分神社(みくまりじんじゃ)まで歩きました。神社についたころには雪が風に激しく舞い、私のコートも真っ白になっていました。私が大好きな拝殿の丸柱の奥には、古風な供物台にのせられたお正月の神様の召し上がり物=神餞の大根と人参。薄暗い無彩色の背景にその白光りする大根と人参の赤色が印象的でした。
今年3月には、吉野の大峯奥駈を撮った写真集が刊行され、そして3月31日から6月7日までの吉野山の金峯山寺蔵王堂のご本尊のご開帳にあわせて、蔵王堂に隣接した本地堂で私の写真展を開催します。ちょうど桜の季節にも重なります。
日本国中、数ある桜の名所のなかでも吉野の桜に勝るところはありません。江戸時代につくられたソメイヨシノではなく、日本古来の神々が宿るヤマザクラを見に、是非今年は吉野山にお出かけください。そして、そのついでにちょこっと蔵王堂の奥の写真展ものぞいていただければうれしいです。
今年一年、よい年となりますように。
(六田知弘)